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何も要らない
宮尾 美明

最近、引っ越しをした。

「何も要らない!」
実感したのはそれだけ。

よくもまあこんなに物が貯まっていたことだろう! あきれるばかりに使わないまま取っておいた物が出てくる出てくる。しかも、良い物ほど使わずに取ってある。

誰かの川柳じゃないけれど、
「何時か何かの時にきっと役に立つ」時など永遠に来ないのだ!

人間裸で生まれてきたではないか。何もないのが一番良い。いや最低必要な物があればいい、のである。

以来、口癖は、「何も要らない」である。

服だって、季節の初めに二着あればいい。靴だって同じく季節の初めに二足買えばいい。季節の終わりに心おきなくバイバイ出来そうな手頃な物を。

分かってきてから生活が変わってきた。
ついでに身の回りの生活もみんな見直し。余分なことは手に入れない、を目指す。

生活はまさに
シンプルイズベスト、に尽きる。と思う。

冷蔵庫だって物に溢れていた。バーゲンのまとめ買いでついつい要らない物まで買って、あげく自分と同じ賞味期限切れ。安いはずがそうでもない買い物となってしまう。

というわけで、まとめ買いとバーゲンにつられないようには気をつけている。冷蔵庫も何時も空っぽ状態、洋服ダンスも綺麗サッパリ、靴箱はガラガラ。何と理想的な暮らしではないか。

そしてもう一つ肝に銘じたのが、
捨てる!根性。

見ていると、
「きっといつかは」
「まだ今捨てなくても」
そうなってしまう。

だから、職場の誰かに教えてもらったが、
「必要になったら、自分以外の誰かが持っている、そう思えばいい」

だいたい、大切だと思っていても必要になるときなど滅多にない。あったとしてももはや時効ということになっている、と思う。だから、捨てる。

だが、捨てる前に、すぐに片付ける。来た手紙の返事はすぐに出す。書類にはすぐ目を通し、すぐ返答もしくは返信を忘れない。期限を守るではない。期限は来てすぐと言うことにしてある。

必要な最低の物さえあれば何も欲しくないというのは、ある意味何と心豊かであろうか。

まずその最低必要な物を実に大切に扱う。身につけるものだとくり返し活用し、食べるものだと最後まできちんと食べ尽くす。

物は早目に用意しない。すっかり無くなってから次の物を準備する。そうすれば、必然的に物を大切にする。最後の最後まできちんと使い切る。余分になって余って捨てると言うことはなくなる。

気がついたことがある。そうやって物が必要でなくなると、お金もあんまり使わなくなる。日本の消費に逆比例してしまうようだが、元々それで良いのだ。

ところで、朝誰もいない野道を散歩するときの贅沢さは、当の本人でないと分からないだろうが、空気が実においしいのである。

何もない大地にあんなにも豊かな実りをもたらすのは土と酸素と空気とお百姓さんの汗と力。

働いた人にしか分からない食事のおいしさと水のうまさ。おなかがすく楽しみ。

何もないから夢があり、何もないから有り難みが分かってくる。数々の誘惑と戦って、今日もシンプルライフを生きていく。

大体人間は必ず死ぬ。死んだ後、片付けるのは誰?自分では宝物、そう思って後生大事にしていても、自分以外の人にとっては、宝には程遠い単なるゴミの山に過ぎないのだから。

そう感じた日から何だかすっきりと気持ちが引き締まり、本当に大切なもの、本当にやりたいこと、本当に…が、見えはしないが感じられるようになった。

人間、裸になると恐いものはなくなるのかもしれない。スタートも終末も裸なら、途中もできる限り薄着で済ませたいと願う。

(愛知県発信)

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