記憶をたどると、心地よい切なさが追いかけてきます。
たまには、心のアルバムを深呼吸させてみるのもいいものです。
今とは、ちょっと違ったしあわせな時間を散歩してみませんか。
ぬくもりアーティスト高木政史さんによるなつかしい風景をお楽しみください。
〈ゼンマイ仕掛けの柱時計〉
今日も眠いのを必死に我慢した。

ボン、ボン、ボン 母さんの顔を描きながら 我慢した。
ボン、ボン、ボン・・・・・。
母さんとは 会えなかった。

そして朝も 顔を見れなかった。
おばあちゃんが「約束を、守れなくてごめんね」
と母さんが言っていたと 教えてくれた。

ボン、ボン、ボン 
今日こそ 眠いのを我慢した。

ただいま――。母さんだ。
ただいま――。父さんだ。

貧乏ひまなしの二人が揃ったのは、除夜の鐘が百六鳴ったころだった。
息は白く 空には星がいっぱいだった。


近所のお寺へ 家族全員で初詣に行った。
何を祈ったかは覚えていないが、帰りには父親の背中で寝ていた。

これだけは覚えている。目が覚め、おせち料理の前でもみんなで祈った。
なぜ覚えているかというと 正月、家での祈りはこの後ずっーと
ぼくは、お年玉をたくさんもらえますようにだったからだった。

おじいちゃんの正月恒例の初仕事は、ゼンマイを巻くことだった。
ぼくは、台から落ちないようにおじいちゃんを押さえることから、また一年が始まった。
Copyright MASASHI TAKAGI
ビタミンYOU 高木政史個展「昭和のビタミンアルバム」開催中
これからの発信予定 これまでの作品
すみません。おじいちゃん、おばあちゃん 2008.1.14
おじいちゃん、炬燵にはいりなよ
足踏みミシン